9月3日に映画『星の子』の完成報告イベントが東京都内で行われ、実写映画6年ぶりの主演となる芦田愛菜や、永瀬正敏・原田知世、映画監督の大森立嗣が出席した。イベントでは、本作のテーマである『信じること』や、タイトルにちなんで『流れ星への願い』をそれぞれ披露。『信じること』についての芦田愛菜の熱弁に、永瀬正敏さんが「これ以上の答えはない」と感心する場面もあった。
本作品は、今村夏子(芥川賞作家)の同名小説を実写化したもの。怪しい宗教を深く信仰している両親をもつ娘が、次第に自身を取り巻く環境へ疑問を抱き、葛藤する姿を描き出す。芦田愛菜が主人公で中学3年生のちひろ役を、その両親を永瀬正敏と原田知世が演じる。
◆主演について
≪脚本を読まれた時の印象を教えてください≫
芦田愛菜
「最初に脚本を読んだ時、”信じる”って言うのが一つのテーマになってるのかなって感じて。身近でよく使う言葉なのに今までちゃんと深く考えた事がなかったなっていうことに気が付いたので、自分なりの答えを演じながら、ちひろと一緒に探していければいいなと思いました」
≪今回の映画で髪をバッサリ切るというのご自身で提案されたとも伺っておりますけれども、理由について教えて下さい≫
芦田愛菜
「髪が長い自分がちひろを演じてるっていうのが、あんまりこう‥しっくりこなかったというか、何かイメージと違うなっていう気がして監督に相談させていただきました」
≪ちひろと自分が似ている点、違う点について教えて下さい≫
芦田愛菜
「性格的には、ちひろとはそれほど似ているとは思わなかったんですけど、南先生に色々ひどい事を言われた後に、友達に泣きながら話を聞いてもらうシーンっていうのは、親にも言えなくて一人で抱え込んでいた悩みを心を許せる友達にだったら話せるっていうのが、思春期の私たちのリアルな一コマだなって感じて共感しました」
≪演じる上で考えられたことは?≫
芦田愛菜
「ちひろってすごく多面性がある女の子で、一人でいる時は両親についての悩みだったりとか、悲しみだったり決意だったりとかが表れている‥かと思えば、みんなと過ごしてる時はすごく純粋に楽しんでいたり。そういうちひろの多面的な部分を表現できたらいいなとは思ってました」
◆ちひろの両親役
≪ちひろの両親役のオファーをどのように受け止められましたか?≫
永瀬正敏
「僕はまた大森監督の現場に立たせて頂けるっていうので非常に興奮しながら脚本を読みました。先ほど娘に言われちゃいましたけど、これはひたすら信じるしかないなと。あとはもう大森監督について行こうと思いました」
原田知世
「宗教にはまっていく両親という事なんですけど、このお母さんは、ただひたすら娘の幸せと健康を願っていて、その思いには全く濁りがないんですね。とてもピュアなんです。物語の中で生活ぶりはいろいろ変わっていくんですけど、愛情のクリアな部分は最後まで持ち続けようと思って演じました」
◆監督へのインタビュー
≪今村さんの小説をご自身で脚本を書かれて映像化される上で、どんなところを気をつけられましたか?≫
大森立嗣監督
「とにかくちひろの感情をなるべく固定化しないようにしました。両親は新興宗教に入ってるけれども、学校で暗くなりすぎてないとか、信頼しあえる友達もちゃんといて、いわゆる教室の隅っこにいるタイプではないけど、でも悩みは抱えている女の子。その心の揺らぎをなるべく自由に演じられるような環境を作りたいと心がけました。とにかく、芦田さんに頑張ってもらうしかないってずっと思っていました。さすがでした」
≪どんな所がさすがでしたか?≫
大森立嗣監督
「一番すごかったのは、目に涙が溜まってるシーンで、「今の涙写ってました?」でって言われた時に、スゲエなこの人ってまず思いました。確かに溜まってたなぁって思って。あとは、本(台本)を読む力もすごくあるし、的確な演技力もある。あと、僕はあんまり決め込まないで現場に来てくださいと、現場で永瀬さんや原田さんと会話する中で生まれてくる物を大事にしてくださいって言い続けたので、それをどうやら楽しんでくれていたみたいです」
大森立嗣監督が芦田愛菜に「大丈夫でしたよね?」と聞くと芦田愛菜は「はい、楽しかったです」と答えた。すると、監督が「ほんと?良かったです。言わせたみたいですみません」と言っていた。
◆それぞれにとっての”信じること”とは?
≪この作品は登場人物それぞれの”信じること”が描かれています。芦田さんにとっての”信じる”とはどういう事でしょうか?≫
芦田愛菜
「”その人のことを信じます”っていう言葉を使うと思うんですけど、それってどういう意味なんだろうっていうのを考えた時に、その人自身を信じているのではなくて、自分が理想とするその人の人物像みたいなものに期待してしまってる事なのかなって感じて。だからこそ人は裏切られたとか、期待していたのにとか言うけれど、別にそれはその人がこう裏切ったとか、そういうわけではなくて、その人の見えなかった部分が見えただけであって、その見えなかった部分が見えた時に、それもその人なんだって受け止められる、揺るがない自分がいるって言うのが信じられる事なのかなって思いました。でも、その揺るがない自分の軸を持つのってすごく難しいじゃないですか。だからこそ、人は信じるって口に出して、不安な自分がいるからこそ、たとえば成功した自分だったりとか、理想の人物像だったりに縋りたいんじゃないかなって思いました」
永瀬正敏
「これ以上の答えはないんじゃないかっていう。そうですね、信じることの裏側にある愛情だったりとか、もしかしたら狂気と裏腹のものがあるかなと。あとはそれをどれだけ純粋に思ってやっていくかっていうのが一つあるかなと思って、本作に取り組みました。そして、僕自身が信じているのは、ずっと一貫して映画ですね。映画に裏切られたことは一度もないので、映画を信じています」
原田知世
「信じるって、大きな事から小さな事まで本当にたくさんあるなと思ったんですね。例えば、何かすごく肌に良いってものが自分にとって良かったらそれを信じるし、でもそれが合わなくなる時もあって、そしたら信じなくなる。そういう小さな信じる信じないってのもあると思います。あとは、思春期だったら両親の事だったり、近くにいる大人の影響をすごく受けていて、それらを受け入れてるんだけども、ある時からやっぱり違和感も芽生えたり。その人自身が成長していく過程で必ず通る所なのかなっていうのを、この映画を通して考えました。でも何かを信じることってすごく大切なことだなと思いました。それが自分のエネルギーになる場合もあるし、人それぞれに信じる物が違うっていうことも、自分の中では理解していたいです。この映画もそうですけど、そこに“優しさ”が必要になってくるのかなって考えました」
大森立嗣監督
「僕は映画を作っている時に、俳優さんもそうだし、スタッフさんもそうですが、とにかく信じることからしか始まらなくて、やっぱり映画はみんなの力でできていくものなので、僕の頭の中だけだとやっぱりつまんないものになっちゃうと思うので。ともかく、信じることをいつもやっている感じです」
◆流れ星が流れてきたら何をお願いしたいですか?
タイトルにちなんで星にお願いしたいことを問われると、「猫と話したい!」と回答した芦田愛菜。「最近飼い始めたんですけど、私のことをどう思っているのかとか聞いてみたい。1日でもいいので話したいです。毎日癒やされています」と答えた。
◆メッセージ
大森立嗣監督
「芦田さんと、この両親を見ていると、人を信じることで少し気持ちが柔らかくなるんじゃないかなって思います。なかなかいい映画に仕上がったと思いますので、皆さん是非足を運んでください。お願いします」
原田知世
「見終わった後に、きっと信じることについて、友だちの関係や、家族との関係、人を思う気持ちについていろんなことを周りの方とも話したり、自分でも、いろんなことを考えるきっかけにもなるような作品です。是非多くの方に見ていただけたら嬉しいです」
永瀬正敏
「ぜひぜひ多くの方にご覧いただければと思いますけど、僕がとても好きなシーンがあります。それは、うちのちひろが、あることがあって、あることをしてっていうところなんですけど。そこを是非劇場で、『これかな?あれかな?』と考えながら見ていただければと思います。皆さんよろしくお願いします」
芦田愛菜
「私はこの映画を通して、信じるって何だろうってすごく深く考えたんですけど、きっとその答えって人それぞれ違うし、答えがあるものではないと思うんですけど、映画を見てくださった皆さんにとっては、信じるって何なんだろうとか、自分が信じたいと思えるような大切な人って誰なんだろうとか、そんな風に考えるきっかけになっていただけたら嬉しいなと思います」